知識を届けるだけでは、人は動かない。

知識を届けるだけでは、人は動かない。
神奈川大学「健康経営論」で見えた、対話と環境が生む行動変容
「健康経営の研修を実施しても、その場で聞いて終わってしまう」「管理職と若手で温度差がある」「心理的安全性をテーマにしても、職場の会話がなかなか変わらない」——。企業の人事・健康経営・安全衛生・組織開発のご担当者から、私たちはこうした声をよく伺います。
社会的健康デザイン合同会社が大切にしているのは、知識を一方的に伝えることだけではありません。参加者が自分の経験と結びつけ、互いの考えを聞き、「自分たちなら何ができるだろう」と言葉にするところまでを研修の中に設計することです。
2026年6月12日、神奈川大学経営学部「健康経営論」において、代表・佐藤光弘が「企業における健康経営の実際〜心と身体の健康、そして社会的健康へ〜」をテーマに講義とワールドカフェ型ワークショップを実施しました。前半は生命・こころ・脳、無意識、生活習慣、社会的健康、企業の健康経営実践を学び、後半は学生同士がテーブルを移動しながら「いきいきした、わくわくする経営学部」を考える対話型の時間としました。
健康を「病気がないこと」だけで捉えるのではなく、心身の状態、人とのつながり、安心できる居場所、学びや仕事の環境まで含めて考えること。そして、健康経営を“会社が従業員に何かをしてあげる施策”から、“一人ひとりが参加して、よりよい環境を一緒につくる営み”として体験してもらうことでした。
48名のアンケートが示した「参加したくなる学び」
授業後のアンケートには48名が回答しました。ワールドカフェ初参加者が90%を占める中、満足以上は96%、意見を自由に言えたと感じた学生は98%。講義評価の平均は5点満点中4.40でした。初めての形式でも、多くの学生が安心して参加し、対話そのものを楽しめたことが数字からも確認できます。
満足以上
言えた
初参加
/5点
特に印象的だったのは、「他のグループの意見を聞けた」「自分では気づかなかったことに気づけた」「いろいろな人との交流を楽しめた」という声です。ワールドカフェは、同じメンバーだけで話し続けるのではなく、途中でメンバーが移動して別のテーブルの考え方に触れます。この“視点が混ざる”仕組みが、自分の思い込みを少し緩め、新しい発想を生みます。
もちろん、改善点も率直に寄せられました。「もっと時間がほしい」「もう少し多くのテーマで話したい」「移動のたびに新しい人と関係をつくるのは少し疲れる」といった声です。私たちは、こうした声も研修品質を上げる大切なデータと考えています。参加者の反応を見ながら、対話時間、グループ構成、問いの出し方、アイスブレイクの方法を調整することで、次回はさらに参加しやすい場にできます。
なぜ「カフェのような場」をつくるのか
対話は、テーマや資料だけで生まれるものではありません。席の配置、最初の声かけ、BGM、飲み物やお菓子、付箋、模造紙、そして「ここでは自由に話してよい」と感じられる空気。その小さな要素の積み重ねが、発言のしやすさを左右します。
今回も、握手や簡単なアイスブレイク、付箋を使った可視化を取り入れました。アンケートには「お菓子や握手で距離が縮まった」「意見を出しにくい人も付箋なら共有できた」「やっぱり空気、場所は大切」という声がありました。
これは企業研修でも同じです。「発言してください」と促すだけでは、組織の空気は変わりません。発言したくなる環境、否定されない安心感、他者の話を聞く仕組み、小さな成功体験を用意する。社会的健康デザイン合同会社では、こうした“場のデザイン”そのものを研修の一部として考えています。
健康経営を「身体」だけで終わらせない
健康診断、運動、食事、睡眠、メンタルヘルス対策はもちろん重要です。しかし、働く人の健康を考えるとき、「相談できる人がいるか」「安心して意見を言えるか」「職場に自分の居場所があるか」「自分の仕事に意味を感じられるか」といった社会的な要素も見逃せません。
今回の授業では、心身の健康に加えて「社会的健康」を取り上げ、人とのつながりやサードプレイス、環境が人の状態に与える影響を考えました。
授業の最後に学生がしおりへ書いた言葉には、その学びが端的に表れています。「頼れる仲間を作ることが健康に直結する」「豊かな人間関係」「人との繋がり」「活発な人間関係で健康へ」。健康という言葉が、運動や食事だけではなく、人との関係や日々の環境と結びついて受け止められていました。
「わかっているのに変わらない」を、環境から考える
前半の講義では、食事・睡眠・運動と脳の状態、意識と無意識、行動変容についても扱いました。健康情報を知っていても、行動が変わらないことは珍しくありません。そこで、本人の意思の強さだけに期待するのではなく、自然に望ましい行動を選びやすくする「ナッジ」「ルーチン化」「デフォルト設定」といった環境設計の考え方を紹介しました。
健康・脳・無意識の仕組みを、自分事として理解する。
他者の経験や視点に触れ、思い込みをほぐす。
意思の力だけに頼らず、自然に行動しやすい場をつくる。
企業で健康経営を推進するときも、健康セミナーを一度実施して終わるのではなく、「職場のどこを変えると、日常の行動が変わるのか」を参加者自身が考える時間を入れることで、研修後の一歩につながりやすくなります。
ワールドカフェで、参加者が「自分たちの答え」をつくる
今回の後半テーマは「いきいきした、わくわくする経営学部に向けて!」。学生は、①大学・学部の伸ばしたい強み、②自分が考える“いきいきした、わくわくする学部”、③その姿に近づくために何をしていきたいか、という3つの問いを考えました。
ポイントは、講師が正解を示すのではなく、参加者自身が話しながら答えをつくることです。組織風土、心理的安全性、チームコミュニケーション、ウェルビーイングといったテーマには、会社ごと、職場ごとに異なる背景があります。だからこそ、対話によって「私たちの職場ならどうするか」を言葉にすることが重要です。
企業・団体向けには、目的に合わせて内容を設計します
社会的健康デザイン合同会社では、今回のような「講義+参加型ワークショップ」を、企業・自治体・大学・各種団体の目的に合わせて設計します。健康経営の理解促進だけでなく、管理職研修、安全・安心な職場づくり、心理的安全性、メンタルヘルス、職場コミュニケーション、ウェルビーイング、組織活性化などと組み合わせることが可能です。
・健康経営を「健康施策」から「組織づくり」へ広げたい
・管理職に、安心して話せる職場づくりを考えてほしい
・社員同士のコミュニケーションを活性化したい
・一方通行の講演ではなく、参加者が話し、考える研修にしたい
・心理的安全性やウェルビーイングを、難しい言葉だけで終わらせたくない
・研修後に、職場で実行する具体的な一歩まで考えてほしい
90分の講演、2時間の「講演+ワールドカフェ」、半日型の対話研修など、人数や会場、対象層に合わせて構成できます。経営層・管理職向けには組織課題との接続を深め、一般社員向けには参加しやすい問いと体験を中心にするなど、同じテーマでも設計を変えます。
研修の価値は、「その後の会話」が変わること
セミナーの満足度が高いことはもちろん大切です。しかし、私たちが本当に目指しているのは、その日の満足だけではありません。翌日から職場で「ちょっと聞いてみよう」「自分の考えも話してみよう」「この環境を少し変えてみよう」という会話と行動が生まれることです。
神奈川大学の学生から寄せられた「頼れる仲間を作ることが健康に直結する」という一言は、企業にもそのまま通じるメッセージだと考えています。健康経営は、制度や数値だけで完成するものではありません。人と人がつながり、安心して話し、自分たちの組織をより良くしていこうと思えること。その積み重ねが、いきいきと働ける職場につながります。
「うちの会社でもやってみたい」と思われたら
テーマや時間がまだ固まっていなくても大丈夫です。「管理職向けに2時間で」「安全教育の枠組みでコミュニケーションを扱いたい」「健康経営の次の一手を考えたい」など、現在の課題をお聞かせください。目的に合う講演・ワークショップ構成をご提案します。
関連資料
▶ 2026年度 神奈川大学経営学部「健康経営論」授業まとめ

